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ヒキコモリ漂流記感想 一冊の本としてめちゃくちゃ面白い!

皆さんは山田ルイ53世という男をご存知だろうか? 

 

お笑いコンビ「髭男爵」のツッコミであり、かつてワイングラス片手に貴族のコスプレという独自のスタイルで一世を風靡した、いわば「一発屋芸人」。

 

 

「さすがにそれは知ってるよ!」という方も多いかもしれない。

ではあなたはご存知だっただろうか?彼がかつて「ガチの」ヒキコモリだったことを・・・。

今回はそんな彼の自伝本「ヒキコモリ漂流記 完全版」の感想について書きたいと思います。

 

 

ヒキコモリ漂流記  完全版 (角川文庫)
 

 

まずはこの本、シンプルにめちゃくちゃ面白いです! 

意外かもしれませんが、山田ルイ53世、彼は文章がとても上手です。

臨場感あふれる描写、鋭い観察眼、オリジナリティあふれる表現、そして芸人らしい笑いとツッコミ。

これらがうまぐあいに混ざりあった結果、彼の文章は読みやすく、同時に引き込まれます。

「芸人としては」みたいな留保なしで、一作家として非常にすぐれていると感じました。

そんな彼の才能が良く出ている一節を紹介したいと思います。

 

5歳年上の兄が東京から夢破れて帰ってきたにも関わらず、なぜか堂々としている様子を観察した文章です。

 実家を出る前と帰ってきた時とで、少なくとも僕の中では兄の価値は変わっていない。

むしろ下がっている。

東京の空気感を、兵庫の田舎、地元に持って帰ってきて、その差額で偉ぶっているだけである。

楽な商売だ。差額で儲ける商売にロクなものはない。

 

「ヒキコモリ漂流記 完全版 山田ルイ53世著 p114」

 どうでしょうか?

下駄夫はこの「差額」という表現にとても感心しました。

 

私も田舎者なのでわかるんですよね。・東京に居たってだけでワンランク上って感じになるんですよ、田舎では。

その都会へのあこがれと、同時に「都会がなんだ!」って思う気持ち。

それを「差額」の一言で的確に表現してるんですよ。

素晴らしい!

 

この本の内容としては、良い子・クラスの人気者だった、幼稚園・小学校時代、うんこ事件や中学・そして引きこもっていた時代、そして引きこもりから脱し、人並みに生きていこうと奮闘する大学・芸人時代に分かれています。

タイトルの通り引きこもりを軸に、その前・最中・その後として分かれているわけですね。

 

なのでこの本は引きこもりについての本ではありますし、彼が引きこもってる最中に感じた無力感とか焦り、絶望感などもしっかりとえがかれています。

ただ彼の持ち前の明るさなのか、あまり深刻にはなりすぎませんし、引きこもりの専門書というよりは、引きこもってたこともある芸人の自伝といった感じ。

案外さらっと読めますし、考えさせられる時間よりも、笑わせられてる時間の方が多い印象ですね。

 

この本では相方である樋口くんと出会い、髭男爵を結成するくらいまでが描かれているので、続編にも期待したいですね。

いかにして売れたのかとか、人気絶倒時代はどれだけ多忙だったとか、人気がなくなった後の生活とか。

自身も一発屋である彼が、一発屋たちに取材をした本「一発屋芸人列伝」もおすすめです。

この本では自分や家族についての観察眼が発揮されていますが、こちらの本では他の芸人たちについて、鋭い観察眼が発揮されていて非常に興味深いです。↓

 

一発屋芸人列伝

一発屋芸人列伝