こんにちは!
みなさんはナンシー関さんという人物をご存知ですか?

ナンシー関の耳大全77 ザ・ベスト・オブ「小耳にはさもう」1993-2002 (朝日文庫)
- 作者: ナンシー関,武田砂鉄
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/08/07
- メディア: 文庫
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彼女は、消しゴム版画アーティストであり、同時にコラムニストでもあり、その二つを合わせたテレビに関するコラム(+芸能人の似顔絵ハンコ)はまさに絶品。
今から20年前くらいのテレビの話なので、正直取り上げられている題材のことはよくわからないんですが、それでもめちゃくちゃ面白いですし、芸能界・テレビ業界のことをものすごく的確な視点で書いてるんですよね。
残念ながら若くして亡くなってしまったんですが、彼女のコラムの適格さは、今でも通じるものがあります。
それを証明したのが、「テレビ消灯時間3」の24時間テレビについてのコラム。
あまりに素晴らしかったので、長くなりますが、引用したいと思います。
24時間テレビは チャリティー番組である。 何だかんだ言っても毎年10億円近くの募金を集めるという機能をはたしているんだから、それでいいのではないかというのもアリだ。
(中略)24時間テレビの中で繰り広げられる 送り手と受け手のあり方を見ていると「これが正解かも」と思わざるをえない。
(中略)やはり キーワードは 感動 なのである。
(中略)これは ちゃかしてるんでも、あきれてるんでもなくつくづく思うのだが、マジョリティを束ねるには本当に「感動」しかないんだな、もう。
(中略)ここ数年の24時間テレビは、感動喚起最強のものとして「障害に負けず○○に挑戦」という物語を見せている。
(中略)これらは テレビ番組の中でオチがつくのである。成功・失敗にかかわらず 「すばらしいチャレンジをした」ことで感動というオチが。私なんかが言うのもナンだけど、障害を持っている人の人生にオチなんてない。
根本的な問題は何も解決してないが、きれいなオチを目の当たりにしたら言いっこなし、というか、感動が思考を止めるのかもしれない。障害を持った人が自立生活できる世の中、みたいな 根本的な問題解決は対人関係のエモーショナルな部分もあるにせよ 、もう政治とかの問題である。
(中略)精神論じゃないと思うんだが。
でも確かに10億集まるしなあ。難しいなあ、 チャリティー。
この文は、24時間テレビというのは、障がい者の人たちを見世物にして、健常者に束の間の感動を与える。でもそれは精神論であって、障がい者の人たちの現状を変革するにたるものではない。
しかし、感動で思考停止させた視聴者を募金させるという目的の点からすれば、大成功している。そしてそのお金は障がい者の人たちの、なんらの役に立つはず。
だから、24時間テレビを明確に否定も肯定もできない。
という意味だと、自分は読み取りました。
この文は、自分の24時間テレビというものに対するもやもやとした感情をすごくすっきりとさせてくれました。
自分は24時間テレビは見ないし、見たいとも思いませんが、そういう存在は、いわば必要悪である、と納得することができました。
それにしても、この文章は20年前にかかれているのですが、まったく古びませんよね。(自分も2019年に読んで、感銘を受けたわけですし。)
今の時代でも、きちんと通用するものです。
ナンシーさんのすごさを改めて感じました。