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メッセージ性と娯楽性の両立の難しさ HUGっと!プリキュア 一年間見終えた感想

こんにちは! HUGプリならマシェリ推しの下駄夫です。

 

今回は、一年間「HUGっと!プリキュア」を見終えた感想です。

 

 

個人的には、あんまりノれなかったかなあという印象。

 

なぜそう感じてしまうのか、考えてみました。

 

1.強いメッセージ性は是か非か?

HUGプリは、歴代のプリキュアシリーズの中でも、メッセージ性がかなり強い作品だったと思います。

 

子供向け番組ですから、「友達・家族を大事に!」「人の嫌がることはしない!」「挨拶をしよう!」など、情操的メッセージが強いのはもちろんなのですが、それに加えて「女性/男性であることとは?」「母親になることとは?」「子育てと仕事の両立」などなど社会的なメッセージがかなり強い作品だった、という印象があります。

 

そもそも番組タイトルである「HUG」は、ハグつまり「抱擁」と、「育(はぐく)む」の二つの意味がかかっており、これはどちらも育児と関連付けることができますよね。

まあ、キャッチコピーなどで「今度のプリキュアはお母さん!」ってさんざん言ってましたしね。

 

ただここまで「母親」という要素を押し出してくるとは思いませんでしたね。

要所要所で母親という存在について書かれてきましたが、極めつけは最終回。

 

産婦人科医になったプリキュア(さあや)が、主人公であるプリキュア(はな)の出産を担当するのがラストシーンとはねえ・・・。

しかもこの出産シーンがわりとガチで。

はなめっちゃ苦しんでるし、股ガン開きだし(笑)

 

主人公の出産シーンで終わる女児向けアニメって史上初では?(笑)

 

さらに、敵のモチーフがブラック企業だったり、史上初めて男子がプリキュアになったりと、最初に書いた通り、メタファーという範疇を超えて、社会的なメッセージを伝えようとしていることがわかります。

 

個人的には、こういうチャレンジブルなやり方は大好きですし、うならされた部分もあったので、「アリ」だと思います。

もしも、それが作品としての面白さを損なわないのであれば。

 

2.HUGプリはプリキュアとして面白かったのか?

結論から言ってしまうと、すごく微妙でした。

1で書いたように、強いメッセージ性を持つことはダメなことではありません。

ただそれは作品としての面白さをスポイルしなければ、の話。

 

ここがちょっと「うーん」というか、HUGプリってちょっと「真面目すぎたんじゃないか?」と気がしてしまうんです。

 

1でも書いたように、今回のプリキュアたちは「はぐたんを育てる」というミッションを持っています。

そのためか、歴代のプリキュアたちの中でも、かなり精神年齢高めで、大人です。

 

もちろんそのおかげで、「話の深いところまで踏み込めるという」利点はあるのですが、その代償として「あまりはじけられない」というか。

 

ぶっ飛んだところが少ないんですよね。

 

だからどうしても話が小さくまとまりがちな気がしてしまいました。

プリキュアになる前のえみるは、かなりはじけていましたけどね笑)

 

あと、これも1で書いたんですけど、社会的なメッセージを発信していこうという意図があり、それはストーリーにもきちんと反映されています。

ただ、そのせいで、言葉は悪いですが「説教臭さ」を感じてしまうこともありました。

 

また、これは上に書いたことと関連するかはわからないんですが、ちょっと話のテンポが遅かったかなあ。

全体のストーリーの展開ではなく、一話一話のテンポが、ですね。

 

結論として、ギャグ回なら全力でギャグに振るというように、もっと突き抜けてほしかったですね。

子供番組の面白さって、個人的に「どれだけはじけられるか」だと思うので。

 

 3.キャラクターが似ている?

 たとえばスマイルプリキュアであれば、絵本大好きな主人公・熱い関西少女・引っ込み思案なオタク少女・家族思いの健気な少女・文武両道の完璧少女といったように、キャラにとてもがあります。

 

それに比べると、今回のプリキュアたちって、彼女たちを取り巻く外部的な状況(金持ちの娘だったり、女優だったり、フィギュア選手だったり)は違うんですが、キャラクターの中身というか、方向性がだいたい同じだった気がするんです。

だからいわゆる「担当回」(それぞれのキャラがメインになる回)の特徴が薄いというか。

もうすこしメリハリがあってもよかったかなあ、と。

 

また、今回の敵組織の幹部は、全員妙に人間臭い(笑)

ほとんどのキャラが後に仲間になるので、そこまで悪に振り切れなかったんでしょうね。

でもそこもちょっとものたりなかったかなあ。

 

2と同じような結論になりますが、プリキュアも敵も、もっと(良い意味で)極端な方向に振り切ってほしかった

 

ただ、すべての主要キャラがどんどん登場した最終回の未来のシーンはすごく良かったです。

なんだかんだいって一年の積み重ねがあるわけで、やはり感動しましたね。

 

4.史上初!男子のプリキュア?!

第42話でついに誕生した男子プリキュアキュアアンフィニ

プリキュア15年の歴史の中で初めての事です。

変身したのは若宮アンリ。

彼はHUGプリが、いわば社会派プリキュアであることを象徴するキャラクターです。

彼は「男らしさ」という概念にとらわれず、たとえドレスであろうと「自分の着たいものを着る」という信条をもっている、いわゆるジェンダーレス男子。

 

この「ジェンダーレス」という考え方はHUGプリの中でとてもフィーチャーされた考え方であり、「男/女である前に一人の人間である」という理念があったからこそ、「女の子の特権」であるプリキュアに、(奇跡的な出来事ではあったとはいえ)男子でも変身できたわけです

 

これはLGBTの人たちに対する考え方の変化という、時代の空気をうまくとらえたものであり、また進化を続けるプリキュアシリーズらしい出来事だったとだと思います。

 

更に言えば、いまプリキュアを見ているちびっこの男の子たちの中に、確実に性的マイノリティの子たちは(確率論として)存在するわけで。

そんな彼らに対して「男の子がプリキュアになってもいいんだよ(女の子の恰好をしてもいいんだよ)」という彼らのセクシャリティを肯定するメッセージを発信したことは、大きな意味があったことだと思います。

 

本筋から離れるのでこれ以上は控えますが、この男子プリキュア誕生というのは、非常に意味がある事だったし、素晴らしいことだったと思います。

 

まとめ

以上述べてきたように、HUGプリという作品は、攻める(良い)部分(メッセージ性)と守る(微妙な)部分(キャラクターや演出のはじけなさ)が混じり合っており、結論として「非常に惜しかった」という印象です。

 

1や4で書いたように、攻める部分はめちゃくちゃ攻めていて、そこはすごく評価できるんですが、それをプリキュアというシリーズの魅力の中に落とし込めていなかった。

そこさえうまく言えば、プリキュアの中でも一、二を争う傑作になっていた可能性すらあったと思います。

初期の方のお話はかなりいい感じでしたしね。

 

ただ、タイトルにも書いたように、メッセージ性と娯楽性のバランス調整があまりうまくいってなかったかな、と。

だからどっちらけというか、あいまいで微妙な感じになってしまう回が多かった。

 

締めるときは締め、はじけるときはとことんはじける。

そういう作り方をしてくれたら、もっと良かったかな、と思います。