こんにちは!
今回はドキュメンタリー映画「先祖になる」の感想です。
監督 池谷 薫 プロデューサー 権洋子
この映画は、「ベルリン国際映画祭 エキュメニカル賞特別賞」「 香港国際映画祭ファイアーバード賞(グランプリ)」「 文化庁映画賞(文化記録映画部門)大賞」「 日本カトリック映画賞」などを受賞したドキュメンタリー映画で、自分も非常に面白く鑑賞しました。
この映画について理解してもらうため、まず公式サイトから引用したいと思います。
男の名は佐藤直志。
岩手県陸前高田市で農林業を営み、仲間から“親分”と慕われている。
彼の家は1000年に1度の大津波で壊され、消防団員の長男は波にのまれた。
生きがいを失った男に何ができるのか?
直志はひとつの決断をくだす。元の場所に家を建て直そうというのだ。
自分はきこりだ。山に入って木を伐ればいい。友人から田んぼを借り、田植えもしよう。仮設住宅には何があってもいかない――。
土地に根ざし、土地に生きる人々の行く末をおもう彼の強さと優しさは、少しずつ周囲を動かし、生きることの本質を問いかけていく。
忍び寄る病魔、耐えがたい腰の痛み、遅々として進まない市の復興計画……。
数々の障壁を乗り越えて、77歳の彼は夢をかなえることができるのか――。
この作品が面白いのは、彼の家を建てなおすという決断を無条件肯定しないこと。
彼の家建てなおしにもっとも反対するのは、彼の妻。
この映画の中では、土着的精神論で家の建て直しを強行する佐藤直志に対し、彼の妻は「なぜこんな危険なところに家を建てるのかわからない」と大反対。
結果、別居をし、今までは「お父さん」と呼んでいたのを「直志」と呼び捨てにすることにした、とカメラの前で報告。
さらに、死んだ息子の妻(つまりは嫁)にべったりで自分なんて空気のように扱われている、という夫への不満をぶちまける。
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重要なのは、監督である池谷薫がこのシーンをカットしなかった、残した、ということでしょうね。
ドキュメンタリーというのは、監督の主観がすごく出るジャンルです。
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だってカメラを回して撮ったすべてを流すことはできない。
だから、監督が「残すべきだ」と思ったシーンが残り、「いらない」と思ったシーンはカットされる。
そして映画としてまとめるため、一つの方向性が出来上がる。
それがドキュメンタリー映画というものだと思っています。
だからこそ、この妻の不満たらたらシーンを残したのは面白いな、と。
ただ一方的にこの佐藤直志という人間の生き方を肯定するわけではない、というかね。
もちろん東日本大震災の被害を訴えるドキュメンタリー映画ではあるし、そういった需要にこたえるシーンもたくさんあるんですが、自分はそんなところが面白く感じましたね。
気になった方は是非!