こんにちは!
今回は又吉直樹作「劇場」の感想です。
感想を一言で言うと、「頭でっかちのクズ男だけど憎めない!愛おしい!」と言ったところですね。
この小説の主人公永田は、売れないアングラ演劇劇団の演出家で、胸の奥底に静かに熱い思いを秘めながらも、根拠のない自信で回りを傷つける、いわば社会不適合者。
当然貧乏で、彼女の家に転がり込んで、養ってもらっている「ヒモ」です。
そんなダメ男な彼の、あまりも痛々しい恋愛・考え・生活が、容赦なく描かれています。
この小説は、なんというか「死体写真」とか、「心霊番組」のような、読みたくない・読むのがつらい、けど読んでしまう、というタイプの小説です。
- 作者: キャサリン・デューン,大塚一軌
- 出版社/メーカー: 電子本ピコ第三書館販売
- 発売日: 2006/07/19
- メディア: 単行本
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読んでいる最中、なんども「もうやめてくれ!もう勘弁してくれ!」と思いました。
本当に痛々しいんです。
でも胸に迫るものがあるんです。
例えば永田と、彼の昔の演劇仲間がメールで喧嘩するシーンがあるんですが、ここが本当にすごい。
エゴ、虚栄心、互いへの憎しみが混ざり合って、お互いをののしり合うんですが、ここは本当に心を持ってかれましたね。
人間の自我の醜さというものが、ギュッと凝縮された素晴らしいシーンだと思います。
また、物語のメインストリームである、永田とその恋人との、共依存的な恋愛も、愛おしくて、同時にとても残酷で、悲しいものです。
このように、非常に面白い本なんですが、自分のような屈折した青春を送ってきた(笑)人間の暗部をえぐってくる、恐ろしい小説でもあります。
覚悟してお読み下さい。