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ラストシーンの意味は? スティーブンスピルバーグ監督「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」 感想

こんにちは!

 

今回は「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の感想です。

 監督 スティーヴン・スピルバーグ 脚本 リズ・ハンナ ジョシュ・シンガー 

 ジョン・F・ケネディリンドン・B・ジョンソンの両大統領によってベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に戦争に対する疑問や反戦の気運が高まっていたリチャード・ニクソン大統領政権下の1971年、以前に戦況調査で戦場へ赴いたことがある軍事アナリスト ダニエル・エルズバーグは、ロバート・マクナマラ国防長官の指示の元で自らも作成に関わった、ベトナム戦争を分析及び報告した国防総省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を勤務先のシンクタンクランド研究所から持ち出しコピー機で複写、それをニューヨーク・タイムズ紙の記者 ニール・シーハンに渡し、ニューヨーク・タイムズペンタゴン・ペーパーズの存在をスクープする。

ワシントン・ポスト紙の発行人のキャサリン・グラハムと部下で編集主幹のベン・ブラッドリーは、ペンタゴン・ペーパーズについての報道の重要性を理解し、ベンはキャサリンの友人でもあるマクナマラ長官からニューヨーク・タイムズが掲載しなかった残りの文書を手に入れるよう、彼女に進言する。

だが、友人を追い詰めたくないとキャサリンから拒否され、ベンが仕方なく別の情報源を探り始めたとき、デスクに謎の女性から文書の一部が持ち込まれる。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%BA/%E6%9C%80%E9%AB%98%E6%A9%9F%E5%AF%86%E6%96%87%E6%9B%B8#%E5%BD%93%E4%BA%8B%E8%80%85%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E8%A9%95%E4%BE%A1 2019/9/27閲覧

 

スティーブン・スピルバーグといえば「ET」や「未知との遭遇」「レディ・プレイヤー1」などの、娯楽作・超大作を作る巨匠というイメージがあるかもしれません。

 

もちろんそういう側面もありますが、その一方で「リンカーン」や「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」など、残酷で悲しい歴史を直視するきちんとした(社会的に意義がある)作品もきちんと撮っており、近年はこの両面(エンタテイメント作品と歴史作品)で回している感じがありますね。

そして、この「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」は、 確実に歴史作品に入ってくる作品。

 

しかしながらこの映画、彼の歴史作品の中でも伝えたいメッセージが相当わかりやすい作品です。

映画のクライマックス、もっとも感動的な場面でキャラクターにわざわざ「報道とは国家ではなく国民に資するもの。報道の自由は守られなければならない」といわせていますからね。

100人中98人は「あ、ここが伝えたいことなのね」と一見してわかるでしょう(笑)

報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

報道しない自由 なぜ、メディアは平気で嘘をつくのか

 

 

さて、ではなぜ今スピルバーグはこの映画を撮ったのか、しかも彼のキャリア史上最速で。

それは「今、この時代に作るべき、そして見てもらうべき映画だったから」でしょう、どう考えても。

 

 では、彼がこの映画を今作るべきだと判断した要因は?

それを読み取る手がかりとなるのがラストシーン。

このシーン、日本人の観客からすると少しわかりにくいですが、これは「ウォーターゲート事件」を書いています。

ペンタゴン・ペーパーズ 「キャサリン・グラハム わが人生」より

ペンタゴン・ペーパーズ 「キャサリン・グラハム わが人生」より

 

 

では ウォーターゲート事件とは何か?というと、

事件は、1972年の大統領選挙戦のさなかに当時のニクソン共和党政権の野党だった民主党本部があるウォーターゲート・ビル(ワシントンD.C.)に、何者かが盗聴器を仕掛けようと侵入し警備員に発見されて警察に逮捕されたことから始まった。

やがて犯人グループがニクソン大統領再選委員会Committee to Re-elect the President, CREEPまたはCRP)の関係者であることが分かり、当初ニクソン大統領とホワイトハウスのスタッフは「侵入事件と政権とは無関係」との立場を取ったが、ワシントン・ポストなどの取材から次第に政権内部がこの盗聴に深く関与していることが露見する。

さらに事件発覚時に捜査妨害ともみ消しにホワイトハウスが直接関わり、しかも大統領執務室での会話を録音したテープが存在することが上院調査特別委員会でわかった。このテープ提出の拒絶や、事件を調査するために設けられた特別検察官を解任する(そのため司法長官と次官が抗議辞任)など、明らかな司法妨害が政権よりなされた。

こうした不正なニクソン政権の動きに世論が猛反発し、やがて議会の大統領弾劾の動きに抗しきれなくなってアメリカ合衆国史上初めて大統領が辞任に追い込まれ、2年2ヶ月に及んだ政治の混乱が終息した。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6#%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%81%8C%E7%99%BB%E5%A0%B4%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BD%9C%E5%93%81 2019/9/27閲覧

要するに、この映画の中で報道の自由を弾圧しようとした大統領・ニクソンが起こした、もう一つの事件(=スキャンダル)の始まりを描いている。

 

このウォーターゲート事件アメリカ史上でも三本の指に入る大政治スキャンダルなんですね。

 

さあ、よく考えて下さいよ(笑)

映画として収まりで言えば、政府(=大統領・ニクソン)に新聞(=報道の自由)が

勝利した!でめでたしめでたしで良いはず。

しかし、ここにスピルバーグは、ニクソンが行った新たなる悪事を付け加えた

 

もしかしたら続編を作るぞ!という布石かもしれませんが、自分は違うんじゃないかな、と。

じゃあなぜか?といえば、公権力の側にいる人間であっても、こんなひどいことをするんだぞ、しかも一回懲らしめても懲りないんだぞ、というメッセージなんじゃないか、と。

もっと深読みすれば、報道の自由を犯そうとする人間は、こんな犯罪を犯すこともあるんだぞ、というメッセージ(かもしれない)。

世界〈経済〉全史 「51の転換点」で現在と未来が読み解ける

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 では、最後になりますが、このメッセージを通してスピルバーグが「こいつに警戒せよ!」と伝えたい、「こいつ」とは誰か?

 

ここまで書けばお判りでしょう(笑)

そう「この映画がつくられた当時大統領に就任した、メディア批判を繰り返すあの男」ですよ。

 

そう読み取るしかないでしょう、これは(笑)

これはそういう映画なんです。

そういうアメリカという国の状況を俯瞰してみるとより楽しめる映画なんです。