こんにちは!
今回は「地下にうごめく星」(作・渡辺優)のご紹介です(タイトル長くてすいません笑)。
はじめに
まず一言言わせて下さい。
この小説めちゃくちゃおすすめです!
本の雑誌「ダ・ヴィンチ」で紹介されていたので期待はしていたのですが、その期待をはるかに超えてきましたね。
物語にグイグイ引き込まれ、一気呵成、あっという間に読み切ってしまいました。
この感覚は又吉直樹さんの「火花」以来ですね。
全六章で構成されており、それぞれの登場人物が織り成す群像劇スタイルのお話で、ぞれぞれの物語が重なり合っていくのが読んでいて楽しいですね。
簡単に各章の紹介を。
・リフト
中年女性がアイドルに目覚めるその瞬間を描いたお話です。
自分はドルオタではないですが、特オタではあるので(笑)、自分が大好きなものを見つけたときの、きらめき・ときめき・多幸感がうまく表現されていると感じました。
・リミット
リミットの主人公が惚れた地下アイドルグループのメンバーが主人公。
宝塚の代わりに地下アイドルをやっていた主人公が、自分の所属していたグループが解散することになり、
地下アイドルを続けるか? 結婚するか? 堅実に働くのか?
の選択で悩む様子がすごくリアル。
地下アイドル二十三歳はつらいけど、OL二十三歳はまだまだフレッシュな若手社員だし、若妻二十三歳は、最強って感じ。
地下にうごめく星 渡辺優 p63 集英社
・リアル
地下アイドル好きの高校生女装男子のお話。
現実(リアル)におびえる心情がすごく胸に迫ってきます。
もちろんあのヤバイ女の子の言葉なんてこれっぽちも信じていないので、現実のプレッシャーに泣きたくなる。
俺は大学受験に励まなくてはならないし就職試験に励まなくてはならないし、大人にならなくてはならない。
おっさんにならなくてはならない。
地下にうごめく星 渡辺優 p100 集英社
・天使
かわいい不思議ちゃんの天使(という設定の)女の子が、崩壊した家庭から離脱し、地下アイドルになることを決意するお話。
時々設定が揺らぐのが面白いですね(笑)
イメージとしては、やくしまるえつことかすごい聞いてそうな感じ。
でも、冷たい家庭に育った子はこうやって自分の精神を守っているのかなあと思うと、悲しくなってしまいますね。
・アイドル
ブスではないけど可愛くもないことを自覚している女の子のお話。
気配りができて空気が読めて熱心で、でもかわいくはない。
だから人気は出ないという悲しいリアル。
彼女が特にやる気はないのに、可愛いから人気がある他のメンバーへ嫉妬(?)する場面はすごく切ないです。
この部分も・・・。
小宮山(注・主人公にゾッコンな、ダサいドルオタ)のことを考えてる間 、私は何の不安もない、何の気遣いもしてない、美人で高慢な女の子になれる。
地下にうごめく星 渡辺優 p167 集英社
・リピート
リフトの主人公が再び登場。
めんどくさい(笑)ドルオタ&地下アイドルプロデューサーとなった彼女の奮闘記!
脱ドルオタした人へのコメントがこちら。
歌って踊って幸せと熱狂を振りまくアイドルよりも、ふにゃふにゃギターを弾いてラブアンドピース、でも汚い大人はクソ、みたいな 失笑もののポエムを歌う シンガーソングライターのほうがいいっていうの?
は?
地下にうごめく星 渡辺優 p193 集英社
こじらせてますなあ(笑)
さて、本章は、展開も終わり方も含め「すごく地下アイドルっぽいな」と感じました。
この章は今までの前五章で積み重ねて来たものが結集し、交わり、そして・・・、という感じの章で、すごく引き込まれます。
終わりに
本作が素晴らしいのは、地方の(重要)地下アイドルという点に着目したこと、彼女たちの心情が事細かに描かれていること、そしてすごく繊細で美しい文章を書くこと、ですね。
地下アイドル好きな方はもちろん、主人公たちがほとんど全員女性、作者も女性なので、そういったジャンルに興味がなくても、女性ならすごく共感しながら読めるんじゃないかな、と。
もちろん男性が読んでも面白いですけどね!
本当に下駄夫おすすめの一冊です!
是非!