こんにちは!
今回は鈴木智彦著「サカナとヤクザ」の感想です。
築地市場から密漁団まで、決死の潜入ルポ!
アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大多数が実は密漁品であり、その密漁ビジネスは、暴力団の巨大な資金源となっている。その実態を突き止めるため、築地市場への潜入労働をはじめ、北海道から九州、台湾、香港まで、著者は突撃取材を敢行する。豊洲市場がスタートするいま、日本の食品業界最大のタブーに迫る衝撃のルポである。
〈密漁を求めて全国を、時に海外を回り、結果、2013年から丸5年取材することになってしまった。公然の秘密とされながら、これまでその詳細が報道されたことはほとんどなく、取材はまるでアドベンチャー・ツアーだった。
ライター仕事の醍醐味は人外魔境に突っ込み、目の前に広がる光景を切り取ってくることにある。そんな場所が生活のごく身近に、ほぼ手つかずの状態で残っていたのだ。加えて我々は毎日、そこから送られてくる海の幸を食べて暮らしている。暴力団はマスコミがいうほど闇ではないが、暴力団と我々の懸隔を架橋するものが海産物だとは思わなかった。
ようこそ、21世紀の日本に残る最後の秘境へ――。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07JKP1QHM?tag=hatena-22&linkCode=osi&th=1&psc=1 2021/7/21閲覧
こういう裏社会をレポートした本て面白いですよねえ。
自分の知らなかった世界を知れるというか。
今回は「漁業」をテーマに、裏社会との関係性が暴かれています。
メインとなるのは「密漁」と「裏社会」の関わり。
この本によれば、そもそも漁業というのはギャンブル性が高い職業であり(たしかに魚が取れる取れないなんてギャンブルですよね)、徹底した男社会であり(今は変わってるんでしょうけどね)、あいまいな部分が多いことから、ヤクザとの親和性が高いそうなんです。
実際、漁師の次男、三男がヤクザになることも多かった、と。
そういった経歴を持つ人たちが密漁をしてるわけですから、そりゃあ儲かりますよねえ。
腕もあるしルートもあるし。
また、そもそも「密漁」というもの自体がかなりグレーでもあると。
ちゃんとした漁師であったところで、毎回規定量ちょっきりの魚を取ることなんてできやしないわけで。
ちょっと余分に問っちゃった分を市場に流す。
これも一応、密漁です。
あるいは、規定量を超えることを最初から意図して魚を多くとる。
これも密漁。
そして漁師じゃない人間が、夜の海などで魚を取る。
これはもちろん密漁です。
こういったように、一口に密漁と言ってもかなりグラデーションがある、ということなんですね。
ここで問題なのは、正規の方法で取った魚も違法に取った魚も、いったん市場に出てしまえば区別がつかない、ということ。
そりゃあそうですよね、魚にシリアルナンバーが入ってるわけじゃないんですから(笑)
その区別がつかないということを利用して、密漁の魚を仕入れ、売る業者もある。
だからぼくたち消費者も知らず知らずのうちに密漁で取られた魚を食べているかもしれないわけです。
そう考えると、この本でも指摘されていたように、これは漁師という現場の人たちだけの問題ではなく、水産加工という業界全体の闇、なのでしょうね。
ちなみにこの本で自分がもっとも面白いと思ったのは根室のパート。
ここは北方領土問題から発展し、ロシアと日本、国民と政府、戦争とスパイなどなど、密漁にとどまらない広がりを見せる部分でめちゃくちゃ面白いので是非読んでみてくださいね!
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